Ryusuke Fuda's Newsletter #101

メタバースの波に乗り、またひとつオープンソースソフトウェア(OSS) からの法人化が起こりました。W4 Games は OSSのゲームエンジンである Godot のコア開発者が設立したスタートアップでこの度シードラウンドの調達を行いました。

ゲームエンジンの変遷を辿ると、過去スマホが登場する以前はゲーム会社が内製化して独自に自社開発していました。そこからスマホが登場し、コンソールやPC以外に、iPhone や Android のスマホでゲームをする文化が誕生しました。その頃からUnity や Cocos2dといった無料で使えるゲームエンジンが公開され、誰でもゲームを開発できるようになりました。

今ではゲームエンジンは UnityとEpic が開発している Enreal Engine がメジャーで、ほとんどのゲームや3Dのアプリがこれらで開発されています。しかしこれらはゲームの規模が大きくなるとライセンス費用も大きくなります。またゲームエンジンの制約から外れることはできません。

マーケットでのシェアが数社に決まってくるとそれに反発する動きをするのがスタートアップで、最近はそれにOSSを使う企業が増えています。W4 Games もOSSで提供することで、ゲームテクノロジーを複数社の独占から開放するというミッションを掲げています。Link

いま僕が密かに注目している領域のひとつにブラウザがあります。Webサイトを閲覧できれば何でも良い大半の人が多いだけに実利益よりも時流やナラティブ(物語) によって今までとは違うブラウザを選択する人が増えると思っています。また今まで仕込み段階のブラウザも性能や機能が熟してきています。

USのブラウザシェアを見ると、Google Chrome が 86% と圧倒的ですが、新興のDuckDuckGo が 2.5% とYahoo! に並びそうな位置まで伸びてきています。DuckDuckGo自身は9%と試算しています。 DuckDuckGo はこのニュースレターでも過去何度か取り上げているプライバシーを重視したブラウザです。ユーザーのデータを取得せず、広告にも利用しません。

Google はユーザーデータに基づき検索と連動した広告を表示するビジネスモデルが故に、検索結果の質の低下は避けられません。最近ではAIがSEOに最適化されたコンテンツを生成している例もあり、検索結果の並びの質は悪化しているように見えます。

DuckDuckGo は 行き過ぎたデータ取得を基盤とした Google のビジネスモデルを古いものにする可能性があります。Link

GitHub Copilot は GitHub が開発したAIを使ったプログラミングのアシストツールで、GPT-3 がベースとなっています。コードの目的を口語で書くとそれをコードにしてくれます。

Copilot がリリースされてから、企業で働くプログラマーは恩恵を受けていますが、教育業界は頭を悩ませはじめています。今まで、コンピューターサイエンスの授業では、プログラミングのテストで基本構文の習得と応用として、「1からNまでの全ての数の和を出力する関数 を作成しなさい」などの問題をテストで出していました。ところが、Copilot に 「1からNまでの全ての数の和を出力する関数 」と書くとそのまま答えのコードがAIによって生成されます。これではテストの意味はなくなります。

実際に「1からNまでの全ての数の和を出力する関数」を仕事で書くことはないにしても、考え方やコードの書き方を覚える意味では必要です。しかし答えを一発で出してくれるAIがいる環境でそれを学生に強いるのも難しくなっています。

Large AIモデルの登場により AI によってなくなる職業は単純労働ではなくクリエイターとの見方が強まる中、教育の在り方も変化していく必要があるようです。Link

過去のアーカイブはこちらからご覧いただけます。

https://ryu.theletter.jp/

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